・稼穡(かしょく)という珍しい名前の稲荷社には、どのような由来があるの?
・なぜ現在まで大切に受け継がれてきたの?

この記事では、現地の案内板や説明板をもとに、稼穡稲荷社の名前の意味や歴史、そして六行会(りっこうかい)の生みの親ともいわれる山本伴曽の想いについてご紹介します。

この記事を読むことで、参拝だけでは気付きにくい、長く受け継がれてきた人々の想いにもふれていただけます。

稼穡稲荷社(かしょくいなりしゃ)とは

熊野稲荷八幡三社から歩いて約1分。

「○○社」と聞くと、小さな祠を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。私もそのように想像していました。

しかし実際に訪れてみると、きちんとした社殿が建ち、案内板も設置された、地域で大切に受け継がれてきた神社でした。

案内板には、この地に鎮座する理由や地域とともに歩んできた歴史が記されており、小さな神社にも物語があることを改めて感じました。

説明板

稼穡稲荷社 かしょくいなりしゃ

 稼穡稲荷社は、別名荏川稲荷ともいい、祭神は宇迦能比売(うかのひめ)命である。
この稲荷のはじまりについては、こんな話が伝わっている。
薩摩屋敷から六行会がこの土地をゆずりうけたとき稲荷社は北東の旧目黒川の方にあった。
そこでそんな隅にあったのをたいそう気にしていた六行会の生みの親ともいえる山本伴曽は、ある夜狐の嫁入りの夢を見た。山本伴曽は荏原神社の神主であった鈴木播磨に頼んで、伏見稲荷さんを分請したとゆうのである。
そしてそれは文久元年(一八六一年)という。
稼は植える、穡は収める、とりいれを意味し、農業の意味である。
稼はカセギともよみ、かせぎためると読み替え商売繁盛の神として命名した。
稲荷の祭りは、春に田の神を里に迎える二月の初午である。赤い旗や白い旗をたて、地口行灯を立て、世話人が赤飯を蒸して、町内の子供たちや参詣人に配った。
子供たちは、太鼓をたたき町内を回り、各家庭から菓子などをもらって歩いた。
そんなお稲荷さんの初午は、昭和初期まで残っていた。

一般財団法人 六行会りっこうかい

山本伴曽の想いとともに歩んできた神社

私は、この説明板の中で特に心に残ったのが、「そんな隅にあったのをたいそう気にしていた」という一文でした。

当時の地理は分かりませんが、山本伴曽は、お稲荷さんが隅に鎮座していることを気に掛けていたのかもしれません。

だからこそ、狐の嫁入りの夢をきっかけに伏見稲荷から御分霊をお迎えし、現在まで大切に受け継がれてきたのではないかと、私は感じました。

私は、山本伴曽の想いは、その時代だけで終わらなかったのだと感じました。

今、私たちが目にする社殿は、もちろん当時のままではありません。長い年月の中で建て替えられ、大切に受け継がれてきたのでしょう。

境内に立つイチョウも同じです。長い年月を経ても今なおこの場所で枝を広げているのは、その木を見守り、守り続けてくださった方々がいたからではないでしょうか。

山本伴曽の想いは、「一人の想いで終わることなく、その後も多くの人へと受け継がれ、今の稼穡稲荷社につながっている」私は、そう感じました。

稼穡(かしょく)の意味

「稼」植える、「穡(しょく)」収める、とりいれを意味し、農業の意味。

稼はカセギとも読み、かせぎためると読み替え商売繁盛の神として命名されました。

稼穡稲荷社の御祭神は、案内板に宇迦能比売命(うかのひめ)と記されています。

「稼穡稲荷のイチョウ」 品川区指定天然記念物

境内には、品川区指定天然記念物に指定されている「稼穡稲荷のイチョウ」があります。

説明板によると、このイチョウは推定樹齢500~600年高さ約23m幹回り約4.1mにもなる大木です。長い年月をかけて成長し、地域の人々や稼穡稲荷社を静かに見守ってきました。

私が訪れた時も、その大きさに思わず見上げたくなるほどで、写真を撮ろうとすると全体が入りきらないほどでした。

社殿とともに長い歴史を見守ってきたイチョウは、稼穡稲荷社を訪れた際にはぜひ注目していただきたい見どころの一つです。

説明板

品川区指定天然記念物

稼穡稲荷(かよしょくいなり)のイチョウ

所在 北品川二丁目三十二番三号 稼穡稲荷

指定 昭和五十三年二月十四日(第四号)

 イチョウはイチョウ科に属する落葉の高木で、高さ三十メートルにもなり、葉は扇形で秋に黄葉(こうよう)する。雄雌(めすとおす)それぞれの別の木となる。
 本樹は雄木で、幹の周りは四・一メートル、高さは二十三メートルあり、推定の樹齢は五百年から六百年である。木の勢いも盛んで、姿も整っており、本区内のイチョウの中でも屈指の巨木である。
 本樹は、長い間稼穡稲荷社の神木として保護されてきた古木で、遠くからの景観も大変美しい木である。

 平成七年三月三十一日 品川区教育委員会

稼穡稲荷社 基本情報

名称稼穡稲荷社(かしょくいなりしゃ)
住所〒140-0001 東京都品川区北品川2丁目32−3
電話番号
公式サイト
公式SNS
開閉門時刻24時間
社務所開閉時間

稼穡稲荷社 アクセス・駐車場

最寄り駅京急本線 新馬場駅(セブンイレブンを目印にするとわかりやすいです)
アクセス徒歩5分
駐車場

稼穡稲荷社 御祭神・御利益・創建

御祭神宇迦能比売命(うかのひめ)
御利益商売繁盛
創建文久元年(1861年)

稼穡稲荷社には、山本伴曽の想いだけでなく、その想いを受け継ぎ、大切に守り続けてこられた多くの方々の歴史が今も息づいています。これからも、そのような想いを大切にしながら、神社巡りを続けてまいります。